
私の小学校では、3年生になると図書室で本を借りることができるようになりました。
ワクワクしながら図書室を訪れたわたしが一番最初に借りた本は、たかしよいち著の『墓どろぼうの話』(国土社)という本でした(『日本発掘物語』というシリーズの中の1冊)。
「ピラミッドの謎」とか「王家の秘宝」といったノリの本かと思って借りたこの本、実は出土した銅剣から銘文が見つかったことで有名な埼玉県の稲荷山古墳について書かれたものでした。
この本で「考古学」という学問や「発掘」といった言葉を知った私は、その後考古学や歴史の魅力にどんどん惹かれていくことになりました。
その後、学校の図書室にある考古学関連の本を片っ端から読んでいくとともに、近くの遺跡や博物館などに通うようになりましたが、こと古墳に関しては、小学生のわたしが気軽に見学できるところが近場になかったこともあって、古墳に対する憧れのような気持ちが強くなってきました。
…と、なぜかモノローグ調でスタートしましたが、今回ご紹介する若王子古墳群に初めてたどり着いたとき、子供の頃の憧れの存在に久しぶりに巡り合えたような、そんな気持ちがしたのです。

若王子古墳群とは
若王子古墳群の概要
若王子(にゃくおうじ)古墳群は、藤枝市若王子にある古墳群です。
古墳時代前期(4世紀末~5世紀)の木棺直葬墳(木棺に入れた遺体を墳丘内に直接葬るもので石室はない)23基と、古墳時代後期(6世紀後半~7世紀)の横穴式石室墳5基の合計28の古墳が、山の尾根の上数百メートルの間に密集して作られています(数は現地の解説版による。解説版作成後新しく数基発見されたようで、新しい書籍では33基と書かれています)。
静岡県指定史跡に指定されており、現在は蓮華寺池公園内に「古墳の広場」として整備されています。

若王子古墳群の特徴
若王子古墳群の古墳は、一つ一つはあまり大きくはなく、最大のものでも直径18メートル、墳丘の高さ2メートル程度の規模です。
形態は円形(円墳)が多いようですが、方形や方形周溝墓、また墳丘の形がいびつだったり不明確なものも見られるようです。
銅鏡も出土しており、中央の王権とのつながりも窺える一方、同じく王権とのつながりを連想させる前方後円墳は見られません。
また、とくに古墳時代前期の古墳がこのように密集しているのは、かなり珍しいように思います(どちらかというと、弥生時代後期の墓制とされる方形周溝墓の集まりのような雰囲気の方が近いか?)。
若王子古墳群一帯は、昭和57年(1982)に発掘調査がされていますが、遺構はそのまま埋め戻してあり、その際の出土遺物は、同じ蓮華寺池公園内にある郷土博物館に展示されています。
若王子古墳群の見どころ
蓮華寺池公園内に「古墳の広場」として整備されている若王子古墳群、墳丘には芝が張られ、形が見やすくなっています。
また、木棺が埋まっていた跡は石を並べて場所を示してあるので、古墳内部の様子もイメージがしやすくなっています。

横穴式の石室を持つ古墳もいくつかありますが、石室自体ははっきり見学できなかったと思います。
しかし、解説版が充実しているので、現地と照らし合わせてみれば痕跡は分かるかもしれません(実はあまり意識して見ていませんでした。また行ったときに確認してきますね)。
見晴らしのいい尾根上に墳丘がポコポコと並んでいる様を見ると、なぜ古代の人たちがここを埋葬の場所に選んだのかなど、様々なことが想像されて興味深いです。
なお、古墳群周辺にはベンチや四阿も整備されいるので、ゆっくり休みながら見学をすることもできます。
ただし、蓮華寺池公園駐車場から古墳の広場まで1キロほど歩くことになり、しかもその半分はきつめの坂道なので、運動不足の人はちょっと疲れるかもしれません。
御覚悟を。
若王子古墳群からの眺望
若王子古墳群のある尾根の最高地点の標高は111.3メートルとのことですが、その最高地点付近に築造された1号墳の上にはベンチも設置されており、いわば展望台のように整備されています。
ここからの眺望は素晴らしく、天気がいいと西は大井川や牧ノ原台地、東は伊豆半島や富士山まで見ることができるそうです(厳密にいうと、西側は樹木の影響で眺望が狭められていますが、地形的には西側も十分見通すことができる位置にあります)。
とくに、現在の藤枝市・焼津市にあたる志太平野はまさに一望のもとという言葉がぴったりです。

古代豪族の権力がどのようなものだったのか、私自身はっきりとイメージする材料は持っていません。
でも、あくまでも一般論ですが、この場所に墳墓を作ったということから、ここから見える一帯は自分たちの勢力圏だ、という古代豪族の声が聞こえてきそうです。
逆に、志太平野に暮らす人々にとっては、この山の一角に築かれた墳墓群を目にするたびに、この地域を支配している豪族の力を意識せざるを得なかったのかもしれません。
ともあれ、眼下に広がる景色を眺めていると、なんだか一つの国を手に入れたような、そんな錯覚に陥りそうでもあります。
若王子古墳群見学の駐車場
若王子古墳群見学の際は、蓮華寺池公園の駐車場を利用します。
郷土博物館近くの第一駐車場、公園南側の第二駐車場の二か所があります。
第一駐車場が普通車200台とバス7台、第二駐車場が315台とかなりの台数が駐車できますが、それでも休日などは少し待つこともあります。
上記の駐車場は、基本的には無料で利用できますが、4月下旬から5月上旬に蓮華寺池公園で開催される藤まつりの期間中などは、駐車場整理協力金として普通車500円、大型車1000円がかかることもあります。
なお、時折蓮華寺池沿いの道に侵入していく車を見かけますが、池沿いに行っても駐車場はありませんのでご注意ください。
コメント
[…] なお、蓮華寺池公園に駐車場については、別記事にて書いてありますので参照してください。⇒若王子古墳群で古代豪族の気持ちになって志太平野を眺める […]